さまざまな特徴的身体症状を伴う、強い急性の不安発作をパニック発作と呼びます。この発作が1ヶ月以上にわたり繰り返し生じ、その発作が再発することを恐れて行動がさまざまに制約されるようになる心身の障害をパニック障害と言います。
かつては不安発作を伴う不安神経症と呼ばれていましたが、心理的葛藤に基づく以前に、脳の体質的要因が関係していることが知られるようになり、この呼び名がつけられるようになりました。
パニック発作時には次のような症状が出現します。
以上のうち最初の4つのうちの1つを含め、合計4つ以上の症状が発作的に出現したものをパニック発作と呼びます。
パニック発作が繰り返されるうちに、また出現するのではないかという怯え(予期不安)と症状に対する過敏さを伴うようになり、さらにはそのような発作が出た際にすぐに逃れられない状況、例えば電車や飛行機などの乗り物、映画館や美容室などを恐れ、避けるようになります。これを(広場恐怖)と呼びます。そのため次第に生活の制約が増え、自信をなくし、抑うつ的な状態になることもあります。
全てが解明されているわけではありませんが、脳のある部分を中心に、神経伝達物質のアンバランスが生じやすい体質的な要因が基礎にある場合のあることが分かっています。
また心理的な葛藤を抱えやすい性格傾向がある場合もあります。それらを基礎に、寝不足や疲労、カフェインのとり過ぎや脱水などの心身のストレス、あるいは心理社会的な悩み事などが引き金となり、発症することが少なくありません。
薬物療法を中心に適宜精神療法を組み合わせる治療が有効です。
まずパニック発作が起らない状態を確保することが最初の目標になります。そのために用いられる薬としては、うつ病でも用いられるSSRI(うつ病の薬の項参照)が第一選択となります。発作の予防という点では有効性の高い薬です。
しかし効果が出るまでに2週間以上要することが難点です。そこで治療当初は即効性の期待できる抗不安薬の併用が有効です。またパニック発作が生じた際、あるいは生じそうな状態の場合には、抗不安薬の頓服(臨時の服用)が有効です。
こうして服薬により発作が消失し、あるいは生じたとしても服薬で対処できることが実感されるようになると、自信が少しずつ戻り、予期不安が減って行きます。そのことが発作の出現をさらに減らすことになります。
一定期間発作の起らない状態を維持し、生活の制約が無くなり積極的な生活スタイルが再確立された時点で、症状のぶり返しがないことを確認しながら、ゆっくりと薬を減量し、最終的には服薬が不要になります。
この病気では、発作の苦痛と恐怖のために生活が消極的になり、注意は身体の変調に過剰に差し向けられた状態が続きます。そしてその過敏さが、ちょっとした変調を感知すると不安のスイッチを入れ、発作へと拡大していきます。この悪循環を断ち切るために、過剰な不安を支え、生活スタイルに対する適切な助言を与えるような精神療法的な関わりが有効です。