☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。
コロナ禍では多くの職場でテレワークが導入されるなど働き方が変化する一方で、感染の縮小傾向に伴い、再び出社する機会が増え始めた企業もあります。そうでなくても春先には就職や転職、部署異動が多く、新たな環境、新しい業務と慌ただしかったことでしょう。
今回は職場と相談する際のポイントについてお話しします。
実際に新たな環境で働き始めると、当初は新しい業務に頑張って取り組みますが、気が付かないうちに無理をしがちです。一見うまく適応して見えますが、「過剰適応」と呼ぶこともあり、新しい業務や物理的環境、人間関係に慣れるまで、不安や緊張、焦り、疲れを感じ、食欲や睡眠、身体に症状として表れ、「不適応」が起きます。しっかり休養を取り、それでも仕事に行き詰まり、努力しても成果が得られずに不調を感じたら、早めに相談し、適切なサポートを受けることも必要です。例えばクレーム処理のようなストレス、業務過多による負担感、人間関係を理解してもらいやすいのは職場です。何らかの対応や配慮を受けることを「環境調整」と呼びます。
まずは職場で相談できる人を見つけましょう。仕事や職場についてよく知る、上司、先輩、同僚の中でモデルとなるような人が見つかると良いでしょう。信頼できる人が職場にいると安心感につながります。同僚、先輩に愚痴をこぼすだけでもストレスは和らぎます。
職場に何らかの対応や配慮を求める場合は直属の上司に相談することが多いです。直属の上司との人間関係で悩み、相談しにくい方もいますが、その場合は直属の上司のさらに上司(直属の上司が係長なら課長、直属の上司が課長なら部長)に相談できる場合もありますし、人事担当者と相談できる場合もあります。企業によっては、カウンセリングを受ける、職場の保健師や看護師、産業医と相談できる場合もあります。
職場は、ご本人から何も相談がなく、困り事や症状を聞いても「わからない」と言われると、「どのくらい仕事を任せられるか」「具合が悪くなったら、どうしたらいいか」「自分で判断して対処できるか」と迷います。ご自身でも不調になった経過を振り返り、困り事や症状を具体的に説明し、理解してもらうことが大切です。「できそうな事」「難しそうな事」「どのように対応してほしいか」「どんなところを配慮してほしいか」も伝えられると良いです。こうして抱えていた業務を整理し、優先順位をつけるなど、職場と業務内容の調整、業務量の軽減、部署異動について相談を重ね、次に同様の場面で不調にならないための工夫、対処方法を見つけましょう。
但し、実際にどこまで対応や配慮を受けられるかは職場によって異なり、繁忙期など時期や職場の状況によっても変わります。職場と相談をくり返し、それでも勤務を継続することが難しいようなら、一旦仕事から離れた方が良いかもしれません。その場合も休職期間、時短勤務、復職プログラムなど職場によっては利用できる制度がありますが、例えば入社年数や職場との契約によって異なる場合があるため確認が必要です。休職、復職する際の留意点については次の機会にお話しできればと思います。
学校は課題の提出期限や試験、学期、進級、卒業が区切りになりますが、職場はそのような区切りがありません。毎月の決算やプロジェクト、繁忙期など、ご自身でも仕事に区切りをつけ、実際に働く中で「経験から得られる楽という感覚」「7~8割でよしとする感覚」に気づけると、充足感を持てるようになります。
(G)