☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。
自己を肯定し尊重する気持ちを自尊感情Self-Esteemとよびます。
この自尊感情が低いことは不安、抑うつ、摂食障害などさまざまな精神障害の基盤になる場合があります。自尊感情が低いと、自分がどんな人間であるかに自信が持てなくなります。些細な間違いや欠点にもすぐに不安になるかもしれません。そして自分が行ったことの結果に対する自身の評価もいつも低くなるでしょう。
自尊感情は幼少期を通して両親をはじめとした周囲の人たちのポジティブな反応によって発達します。たとえ身体的あるいは知的能力が平均より低かったとしても、もし両親がその子供のできたことを褒めてくれたら、その子供の自尊感情は発達し、向上することができます。しかしすでに大人になっている時点で自尊感情が低かったとしたら、それを改善させることはさらに難しいのではないでしょうか。
自尊感情の低さにつながるような評価の低さは、高い期待の裏返しであると考えられます。こうした高すぎる期待は、親が子供を基本的に信頼しているということとは別のものです。もし両親がその子供を信じているなら、たとえ子供が学校のテストで低い点数を取ったとしても、その信頼は失われず、何らかその子供独自の価値があることを信じるでしょう。それはたぶん学校のテストでは測れないものなのです。
自分に対する高い期待を手放すのは難しいことかもしれません。しかしもしそれを手放すことができたなら、無理をせず、自分にプレッシャーをかけずに楽に生きていけるかもしれません。それができたら逆に自己評価や自尊感情をさげすぎなくて良くなるかもしれないのです。
(具眼 記)