☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。
数年前私は、とても魅力的な名前の焼酎と出会いました。その名は、「夢見る力」。薫り高く、とても豊かな味わいでした。ところで皆さんは「夢見る力」から、どんな「力」を思い浮かべますか?私の心に浮かんだのは、将来への希望に満ちた展望をもてる力ということではなく、寝ているときに夢をみる能力のことでした。
フロイトは、「夢は無意識への王道である」(夢は、無意識を理解する上での重要な手掛かりになるという意味)と述べました。その夢は、私たちの心の象徴作用によって初めて見ることが可能になります。象徴作用とは、何らかの心的な内容について、それを代表、代理、置き換えられたもの(象徴)にする心理作用のことをいいます。例えば、私たちは「ハトは平和の象徴(シンボル)」といった表現を用いますね。そしてこの作用は、心の丸窓(37)でも述べられたように、母親と赤ん坊の健全な相互作用が行われた場合に獲得されます。もしそれが十分になされない場合には、意味ある夢を見ることができなくなります。
精神療法中の患者さんの夢の報告は、患者さんが治療や治療者に対して抱く無意識的な心の在り様を理解するものとして、とても貴重なものとなります。治療者は、自分が理解したことを患者さんに伝えます。こうした交流は、互いの象徴作用に基くものであり、精神分析的精神療法はそうした営みの積み重ねによって豊かな実りをもたらすのです。
(MUSASHI:記)