心の丸窓(33)
身も心も

☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。

江戸時代の貝原益軒による「養生訓」をめくってみると、身体のみならず精神の養生も説いています。そこには、現代の心身医学にあるような心身の関連が述べられています。

心療内科では、心が無理をした皺寄せで身体が悲鳴を上げている患者さんによくお会いします。医学的には、心の在り処である脳から自律神経系、内分泌系、免疫系のルートを通り、身体にさまざまな症状が出現します。これが心身症とよばれる病態です。一方、心の中の無意識の葛藤が知覚(身体の五感)や運動の麻痺として身体に現れるのが転換症状で、フロイトの精神分析の出発点には、この転換症状をもつヒステリーの患者さんたちとの出会いがありました。

心と身体のつながりは複雑にからみあい、人それぞれに多様な現れとなりますが、私たちはしばしば、患者さんとともに身体の悲鳴に耳を傾け、そこから心の無理にたどり着くような診療をしています。

(風蘭 記)

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