☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。
昨年秋のとある夜、私は高校時代の仲良し二人と会食をしました。実はその一人の愛犬が、一ヶ月ほど前に14歳で天国へ旅立っていたのです。悲しみに暮れる彼女を想い、私達は「偲ぶ会」を開くことにしました。彼女の眼には一瞬涙が溢れましたが、その後はいつもの穏やかな表情で愛犬の思い出話をしみじみと語り、私達はそれに耳を傾けたのでした。幸いそれからも彼女は、まだ悲しみは十分に癒えてはいないけれど、病むまでには至らず暮らしています。
さて丸窓(25)では、大事な対象を失ったことによる心への衝撃は、その後暫くだけでなく、年余にわたり変遷しながらその人の心の在り様に影響を与えていくことが述べてられています。その一つに「命日反応」と呼ばれるものがあります。それは、命日や深刻な対象喪失をした日時の前後に、その時の想いとともに心身の変調が反復して起きるもの(衝撃的な出来事-例えば事故を起こしたなど-の場合は、記念日反応と呼びます)を言います。生活に支障を来すほどならば、対象を失ったことからの回復過程における心の作業(喪の仕事)が病的なものになっている可能性があります。このような場合には、早めに専門家に相談することをお勧めします。私達は、患者さんから良くお話を聞いたうえで、治療が必要かどうかを診断します。そして、投薬やカウンセリングなどその方に合った適切な治療を行い、心の健康を取り戻せるようお手伝いしています。
(MUSASHI:記)