☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。
「適応障害」という診断名は、たとえばうつ病のようには病気のイメージがわきにくいものです。しかし、実は現代社会とは切っても切れない診断名なのです。というのも、その診断基準には〜明確なストレス因子に反応して情緒面または行動面に症状が出現すること〜と定められているからです。
日常には大小さまざまなストレス因子があふれていますが、それらへの反応には個人差が大きく、ある人はやり過ごすことができても、別の人にとってはひどく苦しみに満ちた体験になる場合があります。その結果、うつ状態や不安におちいったり、従来はできていた責任の遂行などができなくなる場合があります。このような状態が「適応障害」にあてはまることがしばしばあるのです。
思い当たることのある方は、打たれ弱いとかだらしないと片付けてしまわずに、いちど精神科を訪ねてみることをお勧めします。「適応障害」の特効薬があるわけではありませんが、状況全体をながめて問題となる要素を検討したり、症状にあわせて薬物を使ったりすることで、現実を大きく変えることはむつかしくても、過ごしにくさが変わっていく可能性があります。
(風蘭 記)