☞「心の丸窓」は心の杜の医師・心理師による心の診療に関するコラムです。
平成24年7月、日本うつ病学会にて初めて、うつ病治療に関して安易な診断・投薬治療に対する自制を促す指針が出されました。いわゆる「うつ病」と診断される方がすでに100万人を超えるとともに、うつ病治療にやや混乱のあることが、その背景にはあります。
実は、「うつ状態」「うつ症状」を呈する病気は多彩で、うつ病だけに限りません。さまざまなこころの病い(躁うつ病・統合失調症・発達障害・認知症・不安障害など)や身体の病気(膠原病・甲状腺疾患・脳血管性障害・神経疾患・悪性腫瘍など)、さらにはクスリの副作用でも「うつ状態」になることが知られています。加えて、死別や離別などの身近な人をうしなう体験、人との関係における葛藤、環境への不適応などによっても「うつ状態」は引き起こされます。
したがって、より良い治療を行なうためには、まずは、自分の「うつ」が何に由来しているのか、その「成り立ち」を治療者と振り返り、理解していくことが欠かせません。「成り立ち」によって選ばれる治療法が異なるからです。
(耕雲 記)